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2009年9月23日 (水)

ル・コルヴュジェ「輝く都市」

 本日は、ル・コルヴュジェ「輝く都市」(板倉準三訳 鹿島出版会 196812月(原著は1947年出版))を取り上げます。同著の表紙には「「輝く都市」はル・コルビュジェの都市計画案のなかでも広く知られたものであり、20世紀の都市計画のあり方に最も影響を与えた都市像のひとつである。」と書かれています。最近では、同氏が設計した上野の国立西洋美術館をユネスコの世界遺産に登録するか否かで話題になったことを覚えている方もいらっしゃることでしょう。

①交通手段について

 「鉄道(それが機械文明を一層促進したのであるが)はやがてなくなり、短い距離の時は自動車道路が、長い旅の場合は飛行機(現在準備中であるが)がこれにとって代るようになるであろう。」(P.28

②自動車専用道路について

 「少しずつ形成され、拡がっていった都市においては、自動車専用道路は、その地面、その地形に完全に結びついた幹線道路をなし、最も直接で、最も簡単な系統に従い、建物だとか、大ビルディングなどに関係なしに、全く独立して走るようにする。(中略)これらのビルへの通路は、幹線道路から諸方に分かれて出ている枝道組織によって、確保される。」(P.105)

③公園道路について

 「その原理は、田舎を縦横に走る主要幹線道路を作り出すことであって、その道は、同じ高さにある諸設備、または高さの異なる種々の設備によって、やはり危険な交差点は一つもないように、保護されているのである。しかし、公園道路の趣きは、自動車専用道路とは対照的である。公園道路は、何よりもまず、多くの風景の問題を解決しつつ、快適な娯楽道路となることに努める。」(P.107-108

④街路について

 ル・コルビュジェは、S・ギーディオンが、家々の壁の両側からはさまれて、窒息しそうになっている交通で充満した街路の廃止を唱える文章を引用したうえで、「緑の町への道を、そして<廊下式街路>廃止の道を。」(P.123)と主張している。

⑤建物の高層化

 「高さの征服はそれ自身で、現代都市に都市計画を施そうとする際に生じて来る根本的な問題を解決してくれる。」(P.44)

 「十分な組織化が行われているところでは、その非の打ちどころのない技術性を示す上下の交通手段のおかげで、建物の完全な利用ができるようになり、かくしてそれに伴う多くの結果が生まれる。(中略)事実、今まではばかばかしい空想と考えられていた処置、歩行者と自動車との分離が実現する。(中略)この改革のもたらす素晴らしい成果は、周囲の空間を支配している建物の新しい姿、住宅街や労働区域の美しい建築的な姿であろう。」(P.56-57)

 「住居、仕事、余暇などの適当な大きさの単位は想定され得る大抵の場合、高さの直接の産物である。実際、ここで解決すべきことは、建造物の周囲に自由な空地を得るために、その建物に高さを付与することなのである。」(P.109)

⑥建築素材について

 鉄およびガラスによる建築が時代の進むべき可能性を照らしてくれる真の公明であることは動かせない事実である。

 ル・コルヴュジェは世界中で数多くの建築作品を残していますが、ル・コルビュジェが考える都市計画を忠実に実行したのがアメリカであり、それを忠実にまねてきたのが戦後の日本でした。ル・コルビュジェが生まれたのはフランスですが、フランスの街並みは中世の骨格をよく残し、建物の高さ、色、素材などが街ごとによく統一されているほか、コルビュジェが忌み嫌った街路は、人々が行きかい、カフェでくつろぐ空間としてよく残されています。それに対し、コルビュジェの思想を反映したアメリカでは、都市の空洞化・スラム化、無味乾燥な郊外都市、そして都市・郊外を問わず、治安が悪く、人々が歩かない街路を実現してしまいました。アメリカをまねた日本でも、高齢化が進んだニュータウン、無味乾燥な学園都市、歩行者をやるせない気持ちにさせる臨界都市の建物配置など、大きな弊害を生んでいます。

アメリカ人は、もともと繊細な美的感覚の持ち主ではなく、かつ神との直接の関係をとなえるプロレタリア教で、人間関係をそれほど重視しないので、このような孤立した、しかし自由な社会は、彼らの求めていたものとみなすこともできるかもしれません。また、広大な土地をインディアンから奪って白紙の状態で開拓し、かつ強大な石油資源調達力があるので、このような社会を建設し、かつ維持するのが可能であったのだと思います。

 しかし、日本は、伝統と歴史があり、相互の人間関係をもって社会の規律とし、土地所有関係も複雑に入り乱れているので、コルビュジェ的な都市計画をそのまま取り入れてはいけないと思います。

 さらに言えば、サブプライム問題をきっかけにアメリカの国力が衰退しつつありますが、私は、アメリカの国力衰退のスタート地点は、ITバブル崩壊でもサブプライム崩壊でもなく、都市をずたずたにしてしまった都市計画手法と、製造業空洞化などによる中産階級の崩壊に起因しているのではないかと勘ぐっております。余談と憶測になりますが、今後のアメリカ経済は、①世界のエリートを集めた最先端の研究開発力、②アジア・中南米の移民やアフリカ系アメリカ人の活力を中心とする発展途上国のような活気、の両極によって保たれ、先進国としての普通の中産階級の力は、弱まっていくような気がしてなりません。

以 上

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